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■『フィルム』 小山薫堂 [書評]

書評
フィルム
小山薫堂

フィルム

フィルム

  • 作者: 小山 薫堂
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/06/23
  • メディア: 単行本


著者は日本が誇る名構成作家であり、究極に「粋」な世界を極めた男。「気鋭の放送作家にして稀代の通人」という紹介がまさに的を得ている。
往年のフジテレビの名番組、「料理の鉄人」「ハンマープライス」を手がけ、実験的な「電波少年」に携わり、そして最近は「トリセツ」「世界遺産」など、幅広く手がけている。同時に、レストランのプロデュースをしたり、自身もFMのパーソナリティーを務めたり、とにかく幅広い世界でアイディアを生み出していく「クリエイター」だ。

小生は、「お厚いのがお好き」というCXの深夜番組が好きだった。そして、その頃から小山薫堂氏の一ファンである。

今回、たまたま書店で見つけて、買ってしまった。
意外にも小説を出されるのは今回が初めてだという。

内容は、40代前後の様々な世界の男が主人公となり、日常の一コマが描かれている、ショートフィルム的な短編集だ。これはおそらく、映像化をはじめから念頭に置いて書かれているものと思われる。

氏のセンスはとても洗練されていて、そして成り上がりのブルジョア的なきらびやかさではない、気品のある、高貴さが背景にある。これは、単に富を得て色んなものを知ってるからできることではない。六畳一間のボロアパートから家賃何億のマンションまで、ありとあらゆる高さの視座を持っているからこそできる幅なのだ。この次元に達してクリエイティブな仕事をできる人はなかなかいない。とても稀有な存在だ。
そんな小山薫堂という男の書く小説は、やはり小山薫堂にしか書けない作品であった。

分からない単語が多く登場した。ワインの名前とか、時計のブランドとか。青山界隈に関する部分だけはどうにかイメージができたが、それも高校がその辺だったからというだけであって、大人になってその辺を歩き回っているわけではない。十年後に読み返したら全部わかるようになっているだろうか。

ただ、一つ難点があった。「青山クロッシング」など幾つかあったが、複数のドラマを同時並行で書き連ねていくという構成だが、これは活字を読んでいく場合には技法が下手だとただのザッピングにしかならず、読んでいて非常にイライラしてくる。8チャンネルと6チャンネルを30秒おきに変えながら見ているのと同じで、どっちも没頭できない。残念ながら「青山クロッシング」はその要素を感じてしまった。もっと技巧を凝らしてほしい。

文章の表現としての秀逸さとしてはまだまだ物足りないものを感じたが、ちょっとした背景の描き方(人物や物語の背景という意味ではなくて、文字通りの背景。)、アイテムの置き方はやはり抜群のセンスが発揮されていて、心地いい。そして、それぞれの40男の「かすかに残っている青春のカケラ」が動き出していく様子は、テーマとしてとても意義深い。

この手の短編小説としては久々にいい作品だった。次回作も期待したい。


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コメント 2

私も「お厚いのがお好き」が好きでしたが、小山薫堂氏とは、全く結びついていませんでした。小説も出していたとは初めて知りました。参考にさせていただきます。(^^)
by (2006-10-09 21:12) 

俺

そうなんですよ。ひそかに小説を書いてらしたようで…

お厚いのがお好き、また放送してほしいですね。
by (2006-10-12 23:29) 

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